「アニメ大使」は公序良俗違反?

不服2007-7483 条文:4-1-7 登録審決 2007/09/19審決日

外務大臣が「アニメ大使(仮称)」の賞の創設を発表した後に第三者である出願人が出した本願出願は公序良俗に反するとした原審を取り消した事例。

原査定
本願商標の『アニメ大使』は、
麻生太郎外務大臣は(2006年)4月28日、デジタルハリウッド大学秋葉原校(秋葉原ダイビル7階)において、文化外交に関する製作発表を行い、具体的な新軸として、外国人漫画家を対象とした登竜門的賞の創設や、日本の映像・作家を対象とした賞を創設し『アニメ大使(仮称)』と名付け、作品を世界に配信することや文化交流インターンなどの制度を検討することも明らかにした。」(http://akiba.keizai.biz/headline/34/index.html)の記事に鑑みれば、
これと何等関係のない出願人が、上記文字を商標として採択使用することは穏当ではないから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

当審の判断(抜粋)
外務省ホームページ中の「ポップカルチャーの文化外交における活用」に関する報告(ポップカルチャー専門部会)(http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shingikai/koryu/h18_sokai/05hokoku.html)によると、「4月28日に麻生外務大臣デジタルハリウッド大学において行ったスピーチ『文化外交の新発想〜皆さんの力を求めています〜』の中で言及された『アニメ文化大使(仮称)』については、その実現が有意義と考えられる。」と記載している事実があり、その他同趣旨の新聞記事等においても同様に「アニメ文化大使」の語が使用されている事実を確認し得た。

アニメ大使じゃなくてアニメ文化大使だったということ。勇み足失敗?外務大臣の発言だもの。外務所のホームページの方が信頼性高いっ!

「WHITEHOUSE/Cox」(16類,18類,25類)は公序良俗にあたらない?!

不服2007-8402 条文:4-1-7 登録審決 2007/09/06審決日

商標中に「Whitehouse」を含むところから公序良俗に反すとして拒絶した原審を覆した事例。

当審の判断(抜粋)
前記図形部分は米国の大統領官邸の建物を表したものではないばかりでなく、「Whitehouse Cox」の文字は、イギリスにおいて創業100年以上の歴史をもつ革製品メーカーとして知られている出願人(請求人)の名称の略称を表すものであり、また、日本国内においても、当該文字を付した出願人(請求人)の製造・販売に係る「財布、バッグ、ベルト」等の革製品が多数販売され、同人の取り扱う商品のブランドとして広く知られていることよりすれば、たとえ、構成中の「Whitehouse」の文字が、米国の大統領官邸の通称を表すとしても、本願商標に接する取引者、需要者は、「Whitehouse」の文字部分にのみ着目して、米国の大統領官邸の通称として認識するというより、「Whitehouse Cox」の文字全体をもって一体不可分の語として把握、認識するものとみるのが相当である。

2007/07/06に紹介した審決とは異なる判断。

「費用ゼロゼロセブン」は「007」を彷彿させるか?

異議2006-90029 条文:4-1-7 4-1-15 維持審決 2007/03/30審決日

商標「費用ゼロゼロセブン」につき、申立人の「007」を想起させるものであるとした異議申立を退けた事例。

商標「費用ゼロゼロセブン」(36類)

当審の判断(抜粋)
本件商標中の「ゼロゼロセブン」の文字部分のみを分離抽出して観察すべき格別の理由は認められず、本件商標が使用される役務と引用標章が使用される映画作品等とは、役務の質、内容等において著しく異なるものであることも併せ考慮すれば、本件商標に接する需要者は、その構成中の「ゼロゼロセブン」の文字部分より、申立人等の取扱いに係る映画作品等を想起、連想することはないというのが相当である。

異議申立→取消理由通知→意見書→維持決定の経路をたどったケース。
7号を理由とした異議申立から取消理由通知が出された例は珍しく、取消理由通知が出されたにもかかわらず維持決定された例も比較的珍しい。

著者の許可なき「Da Vinci Code」の登録は不可

異議2006-90321 条文:4-1-7 取消審決 2007/03/02審決日

著名な書籍の題号「The Da Vinci Code」と類似する本件商標の登録は著者の許可もないものであって公序良俗に反するとして登録が取り消された事例。

当審の判断(抜粋)
本件著作物は、本件商標の登録出願時にはすでに世界的に著名となっていたものであり、本件商標は、一般に親しまれた成語ではなく、申立人の創作に係る語と認められ、わが国有数の出版会社である本件商標権者が本件著作物の存在を知らなかったとは考え難いことなどを総合勘案すると、本件著作物の題号と称呼、観念及び外観において極めて近似する本件商標を申立人の承諾を得ないで登録出願し、登録を得た商標権者の行為は、社会の一般的道徳観念に反する。

「Anne of Green Gables」商標の事件(平成17年(行ケ)10349号)にならった審決。
このケースとは逆に、著者の承諾を得て登録に至った「天璋院篤姫」(登録第5065538号)のニュース(南日本新聞2007/07/27 http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=5726)はまだ記憶に新しいところ。

著名なチェロ奏者の姓「カザルス」の登録は国際信義に反する?!

不服2006-19006 条文:4-1-4 登録審決 2007/06/04審決日
本願商標は、著名なチェリスト「カザルス」氏の姓につき、承諾になしに登録することはできないとした拒絶査定を覆し、本願から「Pau Casals」氏は想起できず、国際信義に反するものではないとした審決。

当審の判断(抜粋)
当該「CAZALUS」の綴字と前審説示の「Pau Casals」の姓「Casals」とを比較するに、第3文字において「Z」対「s」、第6文字において「U」の有無という明確な差を有しており、かつ、姓のみでは、直ちに原審説示の「Pau Casals」を想起するということはできないものである。

最近よく目につくタイプの拒絶理由と審決。カザルスと聞いてあのチェリストを思い浮かべる人はどれほどいるだろうか。彼の名言の一つに「勉強、勉強。君は私よりずっと若いのだから。」というのがあるらしい(出典:http://monn-z.hp.infoseek.co.jp/casals.htm)。

「OriginaFake」が公序良俗に反する商標と一時的判断を受けた理由

不服2006-24081 条文:4-1-7 登録審決 2007/05/30審決日
本願商標は「偽の贋物商品」を直感させるものであり、公の健全商取引、公共の福祉に反し、公正な取引秩序を阻害するとして拒絶査定されたが、審判にてかかる意味合いは認識できないとされた。


(25類)
当審の判断(抜粋)
「OriginaFake」よりは、「原始の、本来の素材に近いもの」程度を想起する場合があるとしても、直ちに原審説示の意味合いを認識するものとは言い得ず、むしろ全体として一種の造語よりなるものとみるのが相当である。

拒絶査定の判断をした審査官は、どうやら「Fake」によいイメージを持たなかったようだが、審判では「FakeFur」「Fakeleather」を例に、商品名の一部として使用される語であると判断されている。ところで、「偽の贋物商品」って、本物ってこと?

プレスリーの邸宅名「グレイスランド」の商標登録は公序良俗に反しない。

異議2006-90503 条文:4-1-7 維持決定 2007/2/23審決日

商標「グレイスランド」

プレスリーの邸宅名「Graceland」と類似する出願本願商標は相続人の許可を得ないでされたものであり、公序良俗に反すると異議申立人は主張。が、特許庁は、プレスリーの邸宅名称の周知性を否定。公序良俗に反しないと結論づけた。

異議申立人の主張 当審の判断
本件商標は、アメリカが生んだ著名なロックンロール歌手「エルビス・プレスリー」が生前住んでいた邸宅の名称として世界的に知られる「Graceland」(以下「引用標章」という。)、また、その片仮名表記である「グレイスランド」と同一又は類似であり、相続人等の承諾を得ないで出願されたものであって、公の秩序 又は善良の風俗を害するから、商標法第4条第1項第7号に該当する。 引用標章は、「エルビス・プレスリーが生前住んでいた邸宅の名称」を表示するものとして、我が国において取引者、需要者間に広く認識されていると認められないところであるから、本件商標は、引用標章の周知著名性に便乗して登録出願され、登録を受けたものというべきではなく、かかる行為が、個人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるとは言えない

先日の「WHITE HOUSE」とは同じアメリカ合衆国内の建物でも扱いは違う。知名度の違いは大きなポイント。ちなみにこの異議申立に対し「取消理由通知」は出されていない